細菌性腸炎(サルモネラ及びカンピロバクター感染症)

サルモネラとカンピロバクター感染症は急性細菌性腸炎の代表格です。どちらの菌も食中毒の原因ともなります。


サルモネラ感染症

病原体:サルモネラ菌

潜伏期間:主に 12-36 時間(6-72 時間)。菌種によっては45日になることもあります。

感染経路:主に汚染された家畜、ペットを含む動物、爬虫類(ミドリガメが有名)、鶏卵、牛肉、鶏肉、未殺菌乳、魚などからの経口感染。

感染期間:症状が治まった後も便中の菌排泄が数週間以上続くことがあり、この間は感染力があります。

症状:下痢、血便、嘔吐、発熱。抗菌薬の投与なしでも、持病の無い健康な成人であれば1週間程度で自然に軽快することもあります。

しかし、乳幼児や老人、免疫系に問題がある人では重症化することがあり、場合によっては死亡に至る可能性もあります。

診断法:便の細菌培養検査で確定します。

治療法:安静、食事療法、脱水の程度次第では適切な補液療法も必要です。乳幼児や高齢者、持病がある人や全身状態が悪い場合は抗菌薬の投与が積極的に検討されます。高熱、腹痛、血便を伴う下痢が続くと、小児の場合は消耗も激しく、しばしば入院での観察・治療が必要になります。下痢止め薬は排菌を遅延させる可能性があるため、使用しません。

予防法:病原性大腸菌の項と同様です。調理者の手洗い、調理器具の洗浄、食品の加熱が重要です。(中心部が75℃、1 分以上など、食中毒予防の各種ガイドラインに従う)。動物に触れた後は良く手を洗うよう、子どもも大人も気を付けましょう。特に爬虫類、両生類や家禽類は頻繁にサルモネラを保菌しています。これらの動物はサルモネラを保菌していても具合は悪くならないので見た目では分かりません。小さな子どもには触らせないようにしましょう。また、ペットとしての小さなカメ(甲羅が4インチ(約10㎝)以下)の販売や配布も禁止されています。

卵についてですが、例えばアメリカでは、サルモネラによる感染症や食中毒を防ぐため、州によってレストランでの生卵の提供が禁止されているところもあり、政府当局も卵は加熱して食べるように勧奨しています。

アメリカとは食品衛生の管理方法が異なる日本では、生食用の鶏卵が当たり前にスーパーで販売されていますが、日本においても、小さな子どもに生卵を食べさせることはお勧めできません。以下のページには、「家庭における卵の衛生的な取扱いについて」という解説が掲載されています。http://www.n-shokuei.jp/food_safety_information_shokuei2/food_poisoning/information/egg_handling.html

この中でも「老人、2歳以下の乳幼児、妊娠中の女性、免疫機能が低下している人等に対しては、生卵(うずらの卵を含む。)は避け、できる限り、十分加熱した卵料理を提供してください。」と記載されています(但し、3歳以上なら絶対安全、という訳ではありません)。

加熱不十分な肉にいたっては、病原性大腸菌のところでも述べたように厳禁です。

登校(園)基準:下痢が治まれば登校(園)可能ですが、手洗いを励行する必要があります。

 

カンピロバクター感染症

病原体 カンピロバクター菌

潜伏期間:通常 1-7 日であるが、もっと長くなる場合もあります。

感染経路:食中毒の原因としては、生もしくは加熱不十分な鶏肉(鶏レバーやささみなどの刺身、鶏のタタキ、鶏わさなどの半生製品、加熱不足の調理品)が最多、次いで牛レバーです。家畜、爬虫類、犬や猫などのペットを含む動物、鶏卵、牛肉、未殺菌乳、魚などからも経口感染します。野鳥や野生動物の糞で汚染された河川や池の水、殺菌不十分な井戸水、湧水及び簡易水道水が感染源となった報告もあります。

感染期間:サルモネラ菌同様、 便中への菌排泄が数週間以上続くことがありこの間は感染源となり得ます。

症状 下痢、血便、嘔吐、発熱。サルモネラに比較するとやや軽い経過を取ることが多い印象ですが、時に腹部の激痛やひどい血便を伴うこともあります。また、発症数週間後にギラン・バレー症候群といって、麻痺を中心とした神経障害を併発することもあります。この合併症の出現と、胃腸炎の重い軽いや抗菌薬投与の有無には関係がないとされています。

診断法:便の細菌培養検査により確定します。

治療法:安静、食事療法、補液。持病がある人や全身状態が悪い場合は抗菌薬を処方します。胃腸炎の症状が重ければ入院で治療が必要な場合もあります。下痢止め薬は排菌を遅延させる可能性があるため、使用しません。

予防法:調理者の手洗い、調理器具の洗浄、食品の加熱(中心部が75℃、1 分以上など、食中毒予防の各種ガイドラインに従う)。

九州地方では「鶏のたたき」を食べる風習がありますが、感染予防の観点からは、特に子供に食べさせることは全くお勧めできません。

登校(園)基準:下痢が治まれば登校(園)可能ですが、手洗いを励行します。