百日咳

コンコンと咳き込んだ後、ヒューという笛が鳴るような音を立てて息を吸う独特の咳を何度も繰り返すのが特徴で、無治療だと連続性・発作性の咳が長期間に渡って続きます。百日咳の「百日」は、百日間咳が続く、という昔の人の観察から付いた名前です。

生後3 か月未満の乳児では呼吸が止まる発作(無呼吸発作)、肺炎、中耳炎、脳症などの合併症が起こりやすく、命にかかわることがあります。

病原体 百日咳菌

潜伏期間 主に 7-10 日(5-21 日)

感染経路(発生時期):飛沫感染、接触感染。 1 年を通じて発生する病気ですが、典型的には春季から夏季に多いとされます。

感染期間 咳が出現してから4 週目頃まで。抗菌薬を開始すれば57 日程度で感染力は弱くなります。

症状 病初期からのしつこい咳が特徴で、発熱することはあまりありません。ひどい咳が出る以外には比較的元気に過ごせることもよくあります。但し、年齢が低いほど症状は重く、特徴的な咳が出始め、咳のために眠れなかったり、顔がむくんだりすることもあります。回復するのに2-3 週間、あるいは数か月もかかることもあります。

また、三種・四種混合ワクチン(定期接種)の接種が完了している場合、全般的に症状は軽く、特に小学生より大きくなると、咳のしつこい単なる「カゼ」に思われてしまうことも少なくありません。しかし、この場合も感染力がしっかりあることに大きな注意が必要です。百日咳と診断されていない軽い症状の家族から、まだワクチン接種が完了していない小さな赤ちゃんにうつり、重症化してしまうことが世界的にも非常に大きな問題となっています。

好発年齢 乳幼児期が多いとされてきましたが、思春期、成人の発症(報告)も増えています。

診断法 百日咳の診断は、培養検査や血液中の抗体を検査する方法が行われてきましたが、確実な診断が難しいものでした。しかし、新しい抗体検査(百日咳抗体IgA、M)や遺伝子性検査(LAMP法)が開発され、早期診断、早期治療も可能になっています。

 

治療法 抗菌薬(クラリスロマイシンやエリスロマイシンなどの、マクロライド系の抗菌薬で効果があります)。

予防法 定期予防接種によって、生後 3 か月~90 か月に沈降精製百日せきジフテリア破傷風混合(DPT)ワクチンと不活化ポリオワクチンが合わさった4 種混合ワクチンを4 回接種します。標準的なスケジュールは生後3 か月-12 か月に3 回接種し、1 年から1 年半後に1 回追加接種、となっています。11 歳以上13 歳未満で沈降ジフテリア破傷風(DT)トキソイドの定期接種がありますが、学童期以降、成人期を含めた百日咳予防のため、この時に百日咳(P)の予防成分も混ぜたワクチンに変更し接種することが検討されています。

登校(園)基準:特有な咳が消失するまで、または5 日間の適正な抗菌薬による治療が終了するまでは出席停止です。