流行性耳下腺炎(おたふくかぜ、ムンプス)

耳下腺(両耳の下周辺にある唾液腺(唾液を作る器官))が急に腫れてくることを特徴とする病気です。合併症としては髄膜炎が多く、また一生治らない難聴(片側が多い)の原因としても注意すべき感染症です。頻度は多くないですが、成人の罹患では精巣炎、卵巣炎などの合併があり、不妊の原因となることも稀にあります。

病原体 ムンプスウイルス

潜伏期間 主に 16-18 日(12-25 日)

感染経路(発生時期):飛沫感染、接触感染。幼稚園、保育所、小学校で流行します。春季から夏季に多い傾向があります。

感染期間 感染力が強いのは耳下腺腫脹の 1-2 日前から腫脹5 日頃までですが、唾液中には、腫脹 7 日前から腫脹後9 日後までウイルスが検出されます。

症状 全身の感染症ですが耳下腺の腫脹が主症状で、顎下腺(顎の下の唾液腺)もしばしば腫れます。腫れは2-3 日でピークに達し、3-7 日間、長くても10 日間程度で消えます。痛みを伴い、特に酸っぱいものを飲食するとひどくなります。また、100 人に1 人が無菌性髄膜炎を、500-1,000 人に1 人が回復不能な片側の難聴を、3,000-5,000 人に1 人が急性脳炎を併発します。

好発年齢 幼児から学童

診断法:主に症状で診断されますが、確定には血液での抗体検査が必要です。特に非流行期には血液検査をしないとはっきり診断できないこともよくあります。

治療法 有効な治療薬はなく、対症療法のみです。合併症に対しても同様です。

予防法 多くの先進国で 2 回の予防接種が行われています。日本では任意接種ですが、日本小児科学会は2 回の接種を推奨しています。ワクチン副反応での無菌性髄膜炎の発症は2,000-3,000 人に1 人、急性脳炎の発症は約25 万人に1 人、と自然感染時に比べ低い率です。

感染拡大防止法:飛沫感染、接触感染として一般の予防法を励行します。しかし感染者の30%程度が「不顕性感染」(罹っているのにはっきり症状が顕れないこと)のため、発症者の隔離だけでは流行を阻止することはできません。

登校(園)基準:耳下腺、顎下腺または舌下腺の腫張が発現した後5 日を経過し、かつ全身状態が良好となるまで出席停止です。